今日から師走ですね!
今年一年もアッという間でした(^^♪
ラストのひと月は何かと慌ただしく、
本当に気づいたら新しい年を迎えることになりそうです。
最後まで悔いなく、2015年を満喫したいですね
さて、最近ちょくちょくブログでも登場している
当店で今修理させていただいている三尺三寸の大太鼓があります。
今回は、胴をきれいにリメイクし
新しい皮を張り替えるメンテナンス。
そこで、まず最初に行う作業というのは古い皮を
外すという作業です。
私たちは、鋲(びょう)を抜くから鋲抜きという風に
この作業を呼びますが、
鋲抜きを終え、無事皮を外すことで
胴の中、太鼓の状況をより具体的に知ることができるのです。
お医者さんが、人の体の中を
確認するのにまず聴診器をを胸や背中にあてますよね~
私たちにとって、外見だけでは判断できない
太鼓の状況を見るということは、
このお医者さんが聴診器をあてることと
同じような感覚です🎶
一見すると健康そうな人でも
聴診器を当てると、少し身体の様子がおかしいということが
発見できますよね。
外された古い皮にはしっかりと
鋲の跡が残ります。
そして、この太鼓
皮を外してみると、胴のふちに
このようなモノが貼られていました。
これなんだかわかります?
この太鼓は明治時代に作られた太鼓ですが、
当時の新聞や広告だと思います。
皮を張る胴体の口の部分にぐる~りと一周こんな感じで
貼ってありました。
さて、何の目的でこのような新聞が貼られているのか?
わかります?
答えは、
新聞でなければならないわけではないのですが、
太鼓というのは、1本の木をくりぬいて作ります。
実際、木を切り倒してから
太鼓の胴になるまでに、木の水分、太鼓に丁度良い状態まで
乾燥させながら仕上げていくのに長い年月がかかります。
その乾燥の途中段階で、一番怖いのが胴体が割れてしまうこと。
せっかく、良い木、立派な木でも
乾燥の途中で割れてしまっては台無しです。
その割れが起こりやすい箇所というのが
太鼓の場合は、皮を張る胴の端っこの部分なんです。
そう、この新聞は乾燥途中で起こる胴のひび割れ防止のために
貼られたモノということです。
新聞はデンプンのりで貼られますから
急激な乾燥を避け、ほどよい保湿を保つ効果があるんだとおもいますね。
今でも、新聞ではありませんが
厚紙を胴体の口の部分に張ることは実際にあります。
さらに、この太鼓は様々な加工がありました。
これは、鋲を打つ箇所を2重に皮を重ねて
補強してあるところです。
ご存知太鼓の革は牛革。
自然の生き物ですので、場所によって皮の厚さが
厚い場所、薄い場所というのがあります。
本来は、できるかぎり均等な場所を選んで作るのですが
大きな太鼓ともなると均等なバランスというのも
正直難しいので薄い場所には、このように皮を2重にあて補強するんです。
さらにさらに(^^♪
これ、外した皮を表から見た写真です。
この表は、太鼓から外さなくても
見えていた部分です(^^♪
これを、よいしょとひっくり返してみるとこんな感じ(^^)
これが、太鼓の内側にあたる皮を外さなければ
見えない部分です。
この皮。
よく見てみてください。
何か気づきませんか~
そう、皮のど真ん中が何やらちょっと黒く丸い感じの跡があります。
さて、これは何の跡でしょうか?
実はこれ、太鼓の革を作る際に
この裏側はというのは“すきカンナ”と呼ばれる道具で
皮を均等に削るという作業をするのですが、
中央ど真ん中の一部分だけは意図的に削らずに残されていました。
残された理由は2つ考えられますが、
1つは、強度。
この太鼓は伝統的な祭礼で使われ来た太鼓で、
この祭りは必ず太鼓のど真ん中を打つことをするので
バチのあたる、ど真ん中の強度を保つために削ることなく厚みを残す。
2つ目は、音。
1つ目の強度と同じで、実際にこのど真ん中を打つ太鼓の
音作りのため。
よく締太鼓なんかで皮の裏や表にバチ皮を張ったりして
使う奏法がありますが、それに似た作用があると考えられます。
いずれも、専門的で太鼓をやらないひと
また太鼓の実際にやっている人でも知らないような
難しく、細かいお話かもしれませんが
実は、今日紹介したことというのは
一つの太鼓を創る際に、行われるほんの一部の出来事です。
表には決して見えてこないし、
そんなこと一生知らずに終わっていくことって
世の中には実はたくさんあるんじゃないかな?って
ふと思いました。
私たちは、目で見えるものだけを
時として事実としてとらえてしまいがちですが
実際は、目で見えない所にこそ
とてもとても大切なことが眠っている・・・・
そんなことってありますね。
いくら綺麗にいつも着飾っている人でも
心に闇を抱えていたら、本当の美しさというのは
伝えられない気がします。
さて、この太鼓さん。
内も、外も
どちらもバランスよく美しく整えて
またたくさんの人に幸せな活きた音を届けられるよう
再生したいとおもいます(^^)/